この記事でわかること
- 「乾燥だから保湿剤」の前に、肌のなにを見ればいいのか
- 保湿にも、水分を保つ働きと逃がさない働きがあること
- ヘパリン類似物質・ワセリン・尿素の選び分け方
- 同じ成分でも、基剤(クリーム・ローションなど)で使い心地が変わること
- 市販薬で様子を見ていい場合と、皮膚科に行ったほうがいい場合
乾燥だから保湿剤、の前に見ていること
乾燥の季節になると、売り場では保湿剤のご相談が増えます。保湿剤を選ぶとき、私はまず、かさつきだけなのか、傷や赤みもあるのかを確認しています。
ひび割れているのか、赤くなっているのか。同じ「乾燥」でも、肌の状態によって選ぶものは変わります。この記事では、登録販売者として売り場で確認していること、そして自宅で私と夫がそれぞれ選んでいるものを、体験ベースで書いていきます。
まず知っておきたい:保湿の働き方はいろいろある
保湿剤とひとことで言っても、成分によって働き方が違います。状態別の話に入る前に、まずそこを整理しておきます。
保湿にも、水分を保つ働きと、逃がさない働きがある
ヘパリン類似物質や尿素は、皮膚の水分を保つ働きがあります。尿素には、硬くなった角質をやわらかくする働きもあります。一方、ワセリンは皮膚の表面をおおい、水分が逃げるのを防ぎます。働き方は違いますが、どちらも乾燥した肌の保湿に使われます。
同じヘパリン類似物質でも、クリームとローションで使い心地が違う
同じヘパリン類似物質が入った薬でも、クリームとローションでは使い心地が違います。例えばヒルマイルドでは、クリームはしっとりした使い心地、ローションはさらっと広げやすい使い心地です。「クリーム」という名前だけで、水分や油分の特徴が決まるわけではありません。迷ったときはパッケージや添付文書を確認してもらえたらと思います。
夫のお薬手帳にもこう書いてある
夫は皮膚科に通院中で、保湿剤を処方してもらっています。お薬手帳には、プロペトについて「皮膚を保護するお薬です」、ヘパリン類似物質について「血行を良くするお薬です。皮膚の乾燥を改善するお薬です。皮膚の引きつりを改善するお薬です」と書かれています。水分を保つ働きと、表面をおおって保護する働きの違いは、この記載からもうかがえます。
状態①:かさつき・つっぱりが中心
肌がかさついて、つっぱる感じがある。傷や強い赤みはない。この状態であれば、肌の状態や使う部位に合う保湿剤を選びます。
ヘパリン類似物質で保湿する
夫は皮膚科で保湿剤を処方してもらっていますが、次の受診までに足りなくなることがあるようです。足りない分は、市販のヒルマイルドクリーム(健栄製薬・ヘパリン類似物質0.3%配合・100g・第2類医薬品)で補っています。
ヘパリン類似物質には、血友病や血小板減少症、紫斑病といった出血性の病気がある方は使用しないという注意があります。わずかな出血でも重大な結果につながるおそれがある方も同様です。使う前に、添付文書を確認してもらえたらと思います。
尿素入りを選ぶ方も。傷や赤みには注意
売り場では、高齢のお客様が尿素入りの製品を好んで選ばれる印象があります。尿素は角質をやわらかくしながら水分を保つ働きがありますが、傷口やひび割れ、赤くはれた部分には使用できない製品もあります。
同じ家族でも、選ぶ理由が違う
同じ乾燥対策でも、私と夫では選んでいるものが違います。私は手荒れにプロペト ピュアベールa(第一三共ヘルスケア)が中心です。手だけとはいえベタつきはやっぱり気になるので、夜に塗るときは使い捨て手袋を10分ほど着けて、寝る前に外すこともあります。それでも、続けて使う費用のほうを優先して、コストパフォーマンスで選んでいます。
夫は体全体に塗るので、話は逆になります。広い範囲に塗るとなると、ベタつきの少なさのほうが続けやすさに直結するようで、プロペトよりヒルマイルドクリームのほうが気に入っているようです。同じ「乾燥対策」でも、塗る範囲が違うだけで、優先したいことが変わってくるのだと感じています。
どちらも、まず自分の症状や部位に使える製品かどうかを確認したうえで選んでいます。そのうえで、成分だけで正解を決めるのではなく、続けやすさも選ぶ理由になる。売り場で「どれがいいですか」と聞かれたときも、私はこの考え方でお答えしています。
手の乾燥にはハンドクリームも
手の乾燥が気になる方には、ハンドクリームを併用する方法もあります。私が制服のポケットに入れて手放せないハンドクリームについては、姉妹サイト「かおまえのひとりごと」の記事で紹介しています。
👉 50代登録販売者が手放せない制服ポケットのお役立ちグッズ【レジ・売場対応】
状態②:ひび・あかぎれ・掻き壊しがある
肌が乾燥を通り越して、ひび割れたり、あかぎれになったり、かゆくて掻いてしまった跡がある。この状態になると、選び方に少し注意が必要です。
ひび・あかぎれなら、ヘパリン類似物質も使える場面がある
市販のヒルマイルドクリームの効能・効果には、手足のひび・あかぎれのほか、しもやけ(ただれを除く)も含まれています。ただし、これは効能に明記された症状に限った話で、傷全般に使えるという意味ではありません。
湿潤やただれがひどいときは、使う前に相談する
線を引くところは、傷があるかどうかではなく、その傷の状態です。ヒルマイルドもプロペト ピュアベールaも、湿潤やただれがひどい場合は、使う前に医師や薬剤師に相談することになっています。傷が深い場合も、自己判断で市販薬を使うより、皮膚科を受診することをおすすめします。
尿素やメントールは、傷があるところで注意したいこと
尿素入りの医薬品には、傷口やひび割れ、赤くはれた部分には使用できないものがあります。しみるかどうかでは判断せず、使う前に添付文書を確認してもらえたらと思います。
接客をしていると、メントール配合の製品でしみたというお話を伺うこともあります。刺激の感じ方は配合成分や肌の状態によって違うので、しみたときは早めに使用をやめて、様子を見てください。強い刺激や赤みが続くようなら、医師や薬剤師にも相談してもらえたらと思います。
ワセリンで守る
手足のひび・あかぎれや皮膚のあれには、ワセリンで皮膚を保護するという選択もあります。私は手荒れに、プロペト ピュアベールa(第一三共ヘルスケア・100g・第3類医薬品)を使っています。医療用のプロペトとは別の商品です。湿潤やただれがひどい場合は、使用前に相談してください。
小コラム:わが家の塗り方
そういえば、皮膚科でもらう薬は最初からヘパリン類似物質とプロペトが混ぜてあるので、塗る順番なんて考えたこともありませんでした。市販で2つを別々に買い足すようになって初めて、「あれ、どっちが先だっけ」と考えるようになったんです。わが家では、ヒルマイルドを先に、プロペト ピュアベールaを後に塗っています。これはわが家がそうしているというだけの工夫で、正しい順番のルールではありません。
状態③:赤み・かゆみ・湿疹が目立つ
乾燥に加えて、赤みやかゆみ、湿疹が目立つときは、保湿だけでは追いつかない段階に来ていることがあります。
冬になるたびに黒ずんでかゆくなっていた方
以前、60代後半くらいの男性が、冬になると脇の下やズボンのゴムが当たる部分がかゆくなり、黒ずんでくるというご相談にいらっしゃいました。尿素入りのかゆみ止めも、ステロイドの塗り薬も使った経験があるとのことでした。
乾燥に伴うかゆみなら市販薬で対応できそうにも思えたのですが、聞いていくと、黒ずみもあり、症状を繰り返していました。ステロイドの塗り薬を使うといったんよくなるものの、やめるとまた同じ状態に戻るとのことです。
ここで私は一度立ち止まりました。いつもの尿素入りや保湿剤をそのまま勧めればいい相談ではなさそうだ、と感じたからです。
その方は、ステロイドを長く使い続けることに不安を感じているようでした。そこで、ウフェナマートを主成分とする非ステロイドの商品をご紹介しました。
箱に赤ちゃんのおむつかぶれにも使えると書かれているのを見て、ほっとした様子で購入されました。もちろん、赤ちゃんにも使えるからといって、誰にでも合う、長く使い続けてよいという意味ではありません。
お話だけでは、かゆみや黒ずみの原因まではわかりません。ただ、薬をやめると繰り返す場合は、乾燥対策だけで様子を見続けず、皮膚科で原因や治療を確認することが大切だと感じました。
赤みが、乾燥性とは限らないことも
赤みの出方や広がり方によっては、乾燥性の湿疹とは別の原因が隠れていることもあります。実は夫も、朝は少し赤い程度だったので、私も夫も最初は乾燥かなと思っていました。
夫は普段、保湿のあとにステロイドの塗り薬を使うことがあります。朝の赤みを見たときも、いつもと同じように保湿の上から塗ったようです。
ところが、夕方に見ると赤みの範囲が広がっていて、しかも「ピリピリする」と言います。ステロイド外用薬は、皮膚の状態や原因によっては適さない場合もあります。そこで、これはいつもの乾燥や皮膚トラブルとして様子を見る話ではなさそうだと思い、すぐに受診するように言いました。
乾燥のケアで様子を見ているだけでは判断がつかないこともあるのだと、あらためて感じています。
保湿だけでは追いつかない段階
赤みやかゆみが強い場合は、保湿剤だけでなく、かゆみ止めの検討が必要になることがあります。
ステロイドの外用薬は、自己判断に注意が必要
かゆみ止めの中には、炎症を抑えるステロイド成分が入ったものもあります。例えばプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(PVA)は、患部で炎症を抑えたあと、体内に入ると作用の弱い物質に変わるよう設計された成分です。ただし、そうした工夫がある成分でも、ステロイドであることに変わりはありません。市販のステロイド外用薬は、添付文書に従って患部に使い、自己判断で長く使い続けないことが基本です。処方薬の場合は、主治医の指示に従います。
セルフケアか、受診か
ここまで状態別に書いてきましたが、最後に一番大事な、セルフケアで様子を見ていい場合と、受診したほうがいい場合を整理します。
様子を見ていい場合
かさつきやつっぱりが中心で、傷や強い赤みがなければ、保湿剤や市販薬でセルフケアをしながら様子を見る、という選択があります。
皮膚科に行ったほうがいい場合
次のようなときは、早めに皮膚科を受診してください。
- ただれていたり、ジュクジュクしている
- 範囲が広がってきている
- 使用している薬の添付文書に書かれた期間で改善しない(ヒルマイルドクリームでは5〜6日が目安です)
- かゆみで眠れない
急に範囲が広がる、痛みが出るといった場合は、この日数を待たずに受診してください。
治療中の方が市販薬を足すときは
すでに書いたとおり、夫は次の受診までに処方薬が足りなくなることがあり、市販のヘパリン類似物質やワセリンで補っています。
治療中で市販薬を足したいときは、主治医か薬剤師に一度相談してみてください。
まとめの表
| 肌の状態 | まず確認すること | ケアの選択肢 |
|---|---|---|
| かさつき・つっぱり | 傷や強い赤みがないか | ヘパリン類似物質・尿素で保湿 |
| ひび・あかぎれ・掻き壊し | ただれ・ジュクジュクがないか | ひび・あかぎれにはヘパリン類似物質も。掻き壊しはワセリンで保護。ただれがひどいときは使う前に相談 |
| 赤み・かゆみ・湿疹 | 保湿だけで追いつくか | かゆみ止めの検討・受診の検討 |
今日からできること
今日できることは、乾燥が気になるところに、傷や赤みがないか見てみることです。
続けたいことは、入浴後に保湿する習慣です。
病院へ行く目安は、ここまでに挙げた「皮膚科に行ったほうがいい場合」に当てはまるときです。市販薬で粘らず、早めに相談してくださいね。
肌の乾燥は、放っておくと知らないうちに状態が変わっていくことがあります。「乾燥だから保湿剤」で終わらせず、今の肌がどんな状態か、傷や赤みはないかを見る。そのうえで、ヘパリン類似物質、ワセリン、尿素の中から選んでいく。それが、私が売り場で大切にしている考え方です。
※本記事は登録販売者としての個人的な体験と一般的な情報をもとに書いています。ヘパリン類似物質には、出血性の病気がある方は使用できないという注意があります。医薬品には、使用できる部位や使い方に制限があるものもあります。使用前に添付文書を確認し、症状が続く場合や、持病がある方、治療中の方、ご高齢の方は、医師・薬剤師・登録販売者にご相談ください。
参考にした情報
- 健栄製薬 ヒルマイルドクリーム 添付文書情報(KEGG医薬品情報):https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_otc?japic_code=J2001000155
- 健栄製薬 乾燥肌治療薬ヒルマイルド 製品情報(公式):https://www.kenei-pharm.com/healmild/products/
- 第一三共ヘルスケア プロペト ピュアベールa 公式ページ:https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/propeto_purevail/
- 興和 新ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム 添付文書情報(KEGG医薬品情報):https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_otc?japic_code=J0601007624
- マルホ「保湿剤の使い方」(もっと知ろう!乾燥肌):https://www.maruho.co.jp/kanja/dryskin/care/02.html
- 第一三共ヘルスケア「ひふ研」ステロイド外用薬の強さの分類:https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hifuken/qa/class_steroid/
- 公益社団法人日本皮膚科学会 一般市民の皆様向けページ:https://www.dermatol.or.jp/public/
- 厚生労働省 医薬品等の広告規制について:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html
